最優秀起業家賞
薬剤師として働く岡田政彦さんは、粉末状の吸入薬を失敗せずに吸い込むための補助器具の開発、事業化について提案し、見事に最優秀起業家賞の栄冠を手にした。これは吸入薬の吸い口に取り付けて使う小さな器具で、内部には正しく吸った時にだけ開く弁が組み込まれており、間違って息を吹き込んでも、薬剤が飛び散ってしまうことがない。商品名は「吸入薬をみんながうまく吸えるように」との願いを込めて「Swell(スウェル)」と名付けた。吸入薬として有名なのは抗インフルエンザウイルス薬のリレンザやイナビルである。このうちイナビルは一回吸入するだけで治療が済む便利な薬だが、9歳以下の患者の約1割は誤って息を吹きこみ、吸入に失敗してしまうというデータがある。一度失敗するとやり直しはできず、薬剤の再購入は全額自己負担となる。「Swell」のような器具は現在、医療の現場には存在しない。吸入薬を服用する9歳以下のインフルエンザ患者は年間85万人にも上るうえ、吸い口の大きさを変更すれば、ぜんそくなどを治療する吸入薬や海外メーカー製にも対応可能で、年間6,000万円以上の売り上げを見込む。販路開拓については、製薬メーカーや医薬品卸会社との連携を視野に入れている。既に特許出願済みで、プレゼンテーションでは3Dプリンターで作った試作品を披露。岡田さんは「既存の吸入剤の形状を変えなくてもすぐに使える商品。困っている人の手元に早く届けたい」と話し、1日も早い事業化に向け、今冬からモニターテストを開始する計画だ。